もなか

欧州ど田舎暮らしで母国語のアウトプットに飢えているのでネットの森に穴掘って王様の耳はロバの耳

太宰治 恥の多い生涯を送ってきました。

 今なぜ太宰?それにしてもこのナルシストなダメ男を劇的なドラマにして視覚化してみたところで、ほんとにしょうもない男。弱くて寂しければ女にすがりゃよろしいの?過剰な自意識に振り回されて傷つくことが純粋か?人間失格といいながらも、そのじつ「ボクはダメなオトコです」と言うことで、なんだ結局自己正当化しているだけではないのだろうか。この代表作を大人になった今読み返してみると、そりゃもう自己陶酔の極地、悲劇のヒロイズムに満ち満ちていて強力なナルシシズムにむせかえるようだ。
「オレはダメな奴だよ」とか何とか言いながら、「そんなことないよ」という温かい返答が聞きたいのだろう?っていう男子は実際いるけれど、そんなボクちゃんを許しておくれよと言いたいだけなんでしょ。うわぁうっざー。アンタのママじゃないのよっていう。なんだかくさくさするので悪口っぽくなってしまう。
 こんなにしつこい嫌悪感は、ドラマの豊川悦司の太宰役が事の他はまっていたからなんだと思う。むかつくほどにナル男がしっくり来ていた。菅野美穂の顔面アンドロイド化に驚いた。つっぱり過ぎじゃなかろうかと心配になっても余計なお世話だった。寺島しのぶの耐える妻は、影のある色気や強さが滲んでいてとても良かった。
 こんなこと言いながらも、中学生の頃など太宰に胸が震えた頃もあったものでした。多感な時期、この己の存在に対する罪悪感ワールドがスマッシュヒット。そうしてなんとなれば意味もなく、「ああ私はダメな奴だ。生きててすんません」みたようなことを考えるとき、私も確かに意味も根拠もなく「誰か許してくれよ、これで良いって言ってくれ」なんて思っているわけで、なんだ、結局これは同種嫌悪だったらイヤだなあと思いながら、最後まで観た。恥の多い生涯を送ってきました。