もなか

欧州ど田舎暮らしで母国語のアウトプットに飢えているのでネットの森に穴掘って王様の耳はロバの耳

ブラザーズ・グリム

mxoxnxixcxa2005-12-06

 時代物のコスチュームを見てうっとりするのが好きなので、ずっと気になっていたこいつに行きました。
ヴェニスの商人』が、いやアル・パチーノはやはり名優だったね、というのを確認するだけの映画で、その名優が名優ゆえの名演によって、こてんぱんにやられる悪人シャイロックをきちんと血を通わせた一個人にしてしまったがために、シェイクスピアの喜劇部分が笑うに笑えない大マジなつらい話になって楽しめたのはコスチュームだけだったので、こいつには期待をしていました。
 愉快なグリム兄弟のどきどきアドベンチャー。つまんねー!何の予備知識もなく行った自分らが悪いとは思いつつ、同行者は始まってすぐに眠りだし、ひじで何度も突付き起こしたと思ったら、中盤で自分が起こされた。
 どのポイントをとっても煮え切らなくて、笑いも冒険も戦いも驚きも恐怖も不思議も話の流れも映像も、なんかもう、もう…もっとメルヒェンを!そもそも主人公をグリム兄弟にする必要があったか?当時の土俗的・呪術的な闇の文化というか、メルヘンの持つ闇に潜むユーモア部分は一切なしで、たまにキモさが混じるだけの冒険物語。くっだらねー時間と金を返せ!という感想しか思い浮かばない私も同行者も、感受性が鈍いつまんないヤツなのだと思う。
 たぶんドイツの黒い森シュヴァルツヴァルトが舞台、赤頭巾、ヘンゼルとグレーテルラプンツェル、眠り姫、白雪姫がとってつけたように強引に絡ませてあるも話の核にはまったく絡まず、寧ろ個々の話自体をごった煮にして作り変え、水に浮かぶ少女はミレイのオフィーリアっぽく、ジンジャーブレッドが走り、かえるの王子やジャックと豆の木のパロディ、「ゆりかご揺れれば坊やも落ちる」のマザーグースモーツァルトか誰かの有名なララバイをハミング、馬が女の子を飲み込み、虫がざわざわ蠢いて、12の月の物語というか、森は生きているというか、魔女狩りだ、呪いだ、ナポレオンだと、なんとなぁくメルヘンっぽいもの盛りだくさん。盛りだくさん過ぎてばらばらじゃんていう。何がしたいのだ。このあたりが、なんだ、「はは、お前らこういうのをちょっとずつ出しときゃ満足だろ?ほら、遊び心に溢れてるだろ?」みたいな。
 何も、諸実に基づいたものが良いんだというのじゃない。グリム童話に対する、メルヘンに対するリスペクトがまずぜんぜんぜん感じられない。ほんとにしょうもない。けれどどんな駄作にだって必ず良い所があるわけで、この映画の場合は何を差し置いてもモニカ・ベルッチのうっとりするような美しさ だった。もにか。