もなか

欧州ど田舎暮らしで母国語のアウトプットに飢えているのでネットの森に穴掘って王様の耳はロバの耳

大島渚

戦場のメリークリスマス [DVD] 戦メリ。私は本当にこの名画とされている作品の良さが分からぬつまらないヤツなのですが、どなたか名画たる所以を教えて欲しいなとずっと思っていて、だってみなが愛するものの良さを理解していないなんて、何やら自分だけが損をしているみたい。好きでないならば無視すればよろしいよ。でもでも、気になるの。置いてきぼりを喰ったみたい。好きの反対は無関心。わかってる。
 よってあちこちレビューサイトを巡って人様の鑑賞後の声を眺めるも、いまいち掴めぬまま。1度観て、何だか安易だなぁと感じ、え、あれ?そういうポジションの映画じゃないんだよね?と時期をおいて最近2度目の鑑賞。
 安易な映画だ。へへ、お前ら西側は、おいらたちをこういう風に見たいんだろ?オリエンタルジャポンは集団発狂しておったというわけ、不思議ファナティックな空気にやられていたってわけ。はは、すんませんね、りありてぃ?だって東洋は西にとって所詮ファンタジーでしょ? ふへへ、お前らのその視点を利用してやったってわけ、おろもいだろう。とか、あえて狙ったにしては、あまりにもな感じである。
 この映画が好きな理由に良くあげられている、ラストのシーン。確かにあのラストシーンがなければもう、どうしようもないです。’83年製作?生まれてた、物心も、あったんだろうけど…という。意外性のあるキャスティングも、ここまで演技が酷いと冗談になってしまうし、超豪華キャストによる稀代の珍作も、時代の空気を知らないと謎。反戦映画?日本人を駆り立てたものの正体に迫りもせずに、どう過去を反省しよう?
 戦時下の狂気は、敗戦国側が一方的に負うしかない。正義は勝者のみが語ることが出来るものだから。ほほら、お前たちの見たいものを見せてやる、みたような部分をあざとく突くほどの重みを感じ取れない。これは日本人がファッションで身につける十字架アクセサリーと同じ、思想なきお飾り映像であって、美学というには柱が見えない。安易な映画だ。

儀式 [DVD] 大島渚が日本を描いた作品をあげるなら、それはもう『儀式』だと思う。封建的な家族制度を冠婚葬祭になぞらえた儀式を通じて、帰属から逃れられない人間模様をあぶり出す。不条理で気落ち悪くて滑稽で物悲しい緊張感の続く作品。

少年 [DVD] あまり好きな監督ではないけれども、一番をあげれば、私はこれ。実際の事件を元に当たり屋を描いた、珍しく感傷的な作品。過感傷に陥らず、終始淡々としたテンポで少年を取り囲む世の不確かさを、継母との微妙な関係と共に静かにみせつける。しかしなんですか、このやる気の無いようでやる気満々のパッケージは。