もなか

欧州ど田舎暮らしで母国語のアウトプットに飢えているのでネットの森に穴掘って王様の耳はロバの耳

杉田夫人

 杉田かおるの結婚は、世の負け犬たちにとって大事件だったそう。負け犬のお姉さま方の仲間入りをするには若干年齢的に早い私も、心からかおる夫人を祝福した。その際、結婚が幸福の最終形態かということは脇において。
 バラエティ番組で誰かが喋っている時、その周りの芸能人の顔を見ていたい。あの一瞬素顔に戻る瞬間を見逃したくない。わりと前から、かおる夫人が自らを切り売りするかのごとく、プライドやら羞恥心やらを投げ打ってプロの笑いに徹する様は、見ていて爽快だったけれども、一抹の切なさを感じていた。その切なさは、子役時代に大人に揉まれ過ぎておかしいことになってしまったカルキン坊やに共通しており。
 カメラが他人をクローズアップしている間、かおる夫人は画面の端で、一瞬「疲れたな」という顔をしていた。たんに酒の飲みすぎなのかも。でもでも、なんかあの荒れた肌や荒み切った目や一見投げやり風な態度は、どうか頑張りまくる杉田かおるが楽になりますように、と願わずにはいられなかった。
 それが今はどうか。確かに、がむしゃらに投げやりキャラを演じる様は面白かった。しかし、男漁りや酒に溺れる日々の自虐ネタを手放したかおる夫人は、明らかにパワーダウンした模様。でもなんか、顔つき変わって綺麗っぽい。物腰が柔らかいっぽい。目が腐って半開きのままってことがあまりない。結婚しただけでこんなに変わるの?それまでだって、彼氏なぞ山ほどいたんでしょ?たぶん、かおる夫人は何か肩の荷を降ろしたのだろう。
 過去二度も他人の借金を背負い、アル中になり、何か知らぬが病気になり、ヌード写真集も出し、赤裸々な手記を出して、芸能界に何度だってカムバックする。もう捨てるものなんか何もない、というやさぐれた目で必死で頑張る姿は、「はたして我々個々人の存在に運命の選択は可能か」、という疑問を投げかけるかのようだった。私達はどうしてこんなに頑張らなきゃいけないのだ。それっていつまで?そんな切ないかおる夫人には、心から幸せになってもらいたい。