もなか

欧州ど田舎暮らしで母国語のアウトプットに飢えているのでネットの森に穴掘って王様の耳はロバの耳

乙女道の影部分

mxoxnxixcxa2007-05-02

思い出が道に迷うとき 過去から光が瞬く
それは子供時代からの信号 恐れ逃げ回る心への信号
夜を共に明かす人を早く見つけなさい
いずれお前の生も過去の光となり
忘れ去られるのだから
Emily Dickinson (1830〜1886)

 鏡を見たら、ああ、なんか老けたなぁと思う。法令線がくっきり出るのは、あと何年なんだろう。三十路を迎えるまでに、あと何年残っているんだろう。昔々、母の口紅を勝手につけてみたり、こっそりハイヒールを履いてみたり、早く大人の女になりたかった頃、私はどんな大人の女になりたかったのか忘れた。10代に入って、早く自由になりたくて、いつも此処じゃないどこかに行きたくて、自分じゃない誰かになりたくて、好きに一人で暮らしてみたくて、ちやほやされるのに有頂天になっていた頃、将来のことを考えるのが怖くて19になったら人生終わりだと思っていた向こう見ずだった頃、私は何が欲しかったんだっけ。
 鏡を見ていたら、背中越しに私に似ているけど10歳くらいは若そうなヤツが覗き込んで、肩に手を置いてこっちを見ながら耳元に囁くよ。「こんなはずだったの?」 もう勘弁してよう。そいつは生意気そうに、さらに言う。「私は素敵に輝く裕福で自由なイイオンナになるんだから」  ロゴスとパトスなんかしらん。私のアニマは獏が喰ったよ。自己実現なんてクソ。哲学なんて絵に描いた餅。何が楽しいわけ?答えなんて結局ないんじゃん。どうせ女脳の私は、難しいことなんか何にもわかっちゃいないんだから。ひたすら寂しい。虚しい。難しいことなんて考えた方が損。誰か可もなく不可もなく背中を撫でてくれ。ああうんざり。でも大丈夫。感じのいい笑顔でニッコリするから。クールに。努めてクールに。うそ。誰か「お前は馬鹿でいいんだよ。もっと馬鹿だといい」とかなんとか言って、私という構造体を言葉で分解して欲しいの。崇拝するから。一生ついていくから。うそ。賢くなりたかった。自分でもびびるくらいの賢い人間になりたかった。でも勉強嫌いだったしさ。ああ、うんざりなの。本読む気にもならない。パートナーが欲しい。
 私は結構強いはずで、孤独好きなはずで、友人も居ないわけでもないんだけれど、どうしてこんなに寂しいんだろう。