もなか

欧州ど田舎暮らしで母国語のアウトプットに飢えているのでネットの森に穴掘って王様の耳はロバの耳

『TOKYO NOIR』女の性は男の性とセットなのかと

mxoxnxixcxa2006-06-25

 この映画を観て複雑な気分になった。TOKYOに生き、昼と夜の顔を使い分ける女たちの、性と官能を描いた3篇のオムニバス。

  • 恋人もなく仕事に明け暮れる女。同僚はみんな結婚し、職場では若くて可愛い後輩がちやほやされ、彼女たちには女として見下されている。誕生日には決まって悪いことが起こるために、35歳の誕生日を目前に憂鬱な日々を送っている「BIRTHDAY」。ある晩不思議な美容室に足を踏み入れて、メイク・ヘアー・ドレスで生まれ変わり、昼はOL夜はホテトルに…という、東電OLをもろに思わせる設定。
  • 恋人を友人に横取りされて傷ついた女子大生。風俗嬢のバイトをして人気№1となり荒稼ぎしている。ある日そのお店に元彼氏がやってくる「GIRL’S LIFE」。
  • 楽しく暮らしていたある日、恋人が突然行方をくらます。彼が産業スパイであったことを知って動揺する女「NIGHT LOVERS」。自分と同姓同名の人物のサイトを発見し、いくつもの名前を使い分けて複数の愛人生活を送っている彼女に興味を持つ。そうして、その複数の愛人生活を送る女の虚しさと寂しさ。

BIRTHDAY TOKYO NOIR [DVD]GIRL’S LIFE TOKYO NOIR [DVD]NIGHT LOVERS TOKYO NOIR [DVD] 3篇ともに、彼女たちの状況設定も心理的推移も、ある程度のリアリティがあり、説得力ある根拠が用意されている。彼女たちの抱える惨めさや虚しさややり切れなさには一定の共感性があるのに、なんだろうこの違和感。
女の性と官能』を描いたオムニバスの3篇が3篇揃って、性が女の自信を取り戻す手段、胸に開いた穴を埋めるもの、生まれ変わる起爆剤としてしか扱われていないからかもしれない。しかも金が絡んで。彼女たちが3人とも、いくら新しい自分を見つけようとも、結局惨めで痛々しい女にしか見えないのだ。3話目の女でさえ、男の性欲を利用しているようでいて、痛みに崩れていく。この映画で扱われる“女の性と官能”は、結局のところ男の性欲によって成り立っているだけで、女の自発的な性というか、生理的な感性に触れていかない。だから金とセックスがセットになって語られ、それを手に入れることで女は生まれ変われるんですよ、ということが言いたかったの?という気持ちも沸いてくる。
 例えばセックスワーカーなんていうのは、出さなきゃ溜まっちゃって困るという排泄行為が隣り合わせの男の性欲を利用して稼いでいるわけで、そういった彼女たちを惨めなものに描くこと事態が、何かこう、「ボク、フェミニストですからぁ」とかいって薀蓄をたれる割には的外れなことを言う男みたいな擦れ違いを感じる。一見女側の目線を演出しつつも、あくまでも外側からの理論で構築されているみたいで。
生きている実感が欲しいから」という有り勝ちな台詞があった。日常の打破というのは、女にとっては良いセックスに出会うことなんだろうか。女を上げるというのは、セックスで男を乗りこなせてこそなんだろうか。社会的抑圧からの開放は、女として性を武器にすることなんだろうか。だとしたら、男は女をなんて悲しい生き物だと思っているんだろう。叶恭子様の潔さを見よ!
満たされなさをセックスで埋める女」というのは紋切り型だけれど、実際どれほどの女が、日々の空虚をセックスで埋めたいと思っているだろう。その辺が非常に疑問。これは男性側の空想と願望半分じゃなかろうか。セックスで埋めた空虚には、普通に考えてもっと大きな虚しさが残るのではないだろうか。セックスで埋まる穴なんて下半身だけ。心の穴はもっとでかくなる。女の生態ってそういうものではないだろうか。だいたい男子とセックスしても、どうも小ばかにされているような滑稽な気分が無きにしも非ずって誰かが言っていましたよ。

 自分を解放しろ、おれがcockでつついてやるから。おまえを自由にしてやる、おれ様のcock様で。女ゆえの生きづらさは性に集約されているだろうか。社会的抑圧は性的抑圧なんだろうか。みんなフロイト大好きですか。その辺が女として当事者の私には分からないし、かといって異性である非当事者の男の監督に分かるわけでもなさそうなので、なんだろう、でも一見の価値のある映画だと思うので見たらいいです。どこまでも虚しいこのオムニバスは、性の空虚感を見据えたという点では何かを突いていると思う。 そもは吉本多香美吉野きみかが見られるだけで必見なんですけどね!GyaOで7月1日まで配信中。近頃GyaOの宣伝ばかりかよみたいな。

http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/touden.htm
もっと知りたい東電OL